Around Me


 あっという間に、2001年も師走の頃となりました。毎年のことながら、時の流れの速さに唖然、愕然、呆然としております。どなた様にとりましても、いい一年でありましたことを心より願っております。何かあったでしょう?いいこと。必ずありましたとも。雅子さま?勿論、それはお目出度いニュースです!でも、あなた自身にもいいことがあったでしょう。思い出すといくらでもあるはず。忘れてしまった人は、来年から日記を付けることをお奨めします。読み返すと、結構たくさん「いい日」があるものですよ。忘れてしまうのは、もったいないです。
 私は師走のせわしさが大好き。年末進行で仕事を詰めて、年賀状を用意して、お歳暮を贈って、忘年会をしてと、忙しいのなら、全部この時期に集中させなければいいようなものの、そうしなければ我々日本人の血が収まらないのでありましょう。実にせわしない。でも、それが楽しくて。そうして迎えるから、新年がまた格別 嬉しいのです。
 今年は、過密スケジュールに加えて、大胆にも、2週間の旅に出るつもりであります。どーしてこの時期に?しかも、なぜスウェーデン?と自分でも思いつつ、ごく自然の流れでそのようなことになりました。彼の地へ行くのは初めて。父と母のように慕って甘えている、あるご夫妻を訪ねて行くのです。オーロラを見ることができるかな?少なくともトナカイには会えるナ、と今から心が弾んでいます。来月、詳しいご報告を致しましょう。
 11月は文化的な活動がさかんな月だけありまして、いい展覧会や芝居や落語会が沢山ありました。その中で、「月間MVP」は、たばこと塩の博物館(渋谷)で偶然見た、六代目三遊亭圓生の「八五郎出世・はちごろうしゅっせ(妾馬)」のビデオ上映でした。
 11月3日から12月9日まで同館で、「浮世絵に見る落語・笑いの中のたばこ文化」という展示があり、出かけて行きました。イベントとして毎日14:30から、ミニシアターでビデオ上映会があるのです。名人の作品を日替わりで2席ずつ。14:25に博物館を訪ねたのは、全くの偶然で、圓生師匠のビデオを拝見できたのは、大変幸せなことでした。
 八五郎出世というお話は、八五郎という極めてがさつで、かなりダメダメな男の妹(お鶴ちゃん)が、お殿様に見そめられて男の子を産み、その祝いに八五郎が城へ呼ばれる、そして末には出世する、というお話しです。江戸時代のお殿様と八五郎のような超庶民は、住まいや生活はもとより、言葉も行動も考え方も、まるっきり違ったわけで、八五郎がお城で繰り広げる、とんちんかんな行動が、実に面 白いのです。
 たいていは、この面白さを強調した演出で話を進めるのですが、圓生師匠のは、少し違います。八五郎が、お殿様の横に座っている、見違えるような美しい妹に向かって語りかけるところに、力を入れているのです。「初孫が生まれたって、ババァ喜んで長屋中にいいふらしてやがらぁ。……でもな、相手がお殿様とくりぁ、その孫の顔を見ることは一生ねえんだなぁって、ババァのやつ、メソメソしやがってよぉ」と、身分の違いを悲しむお母さんの心情を語って聞かせます。長屋住まいの職人らしい、ぶっきらぼうな言葉の中に深い愛を感じて、もう、見ていて、涙がポロポロこぼれ落ちました。また、圓生師匠の表現が素晴らしくて。笑って、泣いて、もう大変。
 昭和54年に他界なさっている圓生師匠ですので、生のお姿は拝見したことはありません。CDでは聞いておりましたが、ビデオを拝見して、改めてその実力に感服いたしました。
 あらあら、今月の近況報告が、落語の話ばかりになってしまいました。落語は本当に面 白いですよ。もし、機会がありましたら皆様も、今の名人、昔の名人、いろいろな噺家の高座を聞いてみてくださいね。
 一人きりでいるとき、泣くことも、怒ることも出来ます。でも、笑うことはなかなか出来ません。笑うには、人の助けが必要なのです。コミュニケーション。落語は、江戸時代の人ともコミュニケートできて、笑うことが出来る、素晴らしいツールですよ。

(2001年12月)


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