Essay


●●● においぶくろ ●●●

 

 昨今のアロマテラピーブームで、お香も随分と脚光を浴びるようになった。いい香りが精神にも身体にもいいことなど、日本人は千年前から気付いていたのに、最近になって、そのことを外国から教えてもらって納得している。ご先祖さま、スミマセン。
 鼻炎持ちではあるが、匂いには子どものころから敏感な方だ。キンモクセイの花があると、ランドセルを背負ったまま、長い時間その下で深呼吸を繰り返していた。近所のおかずも、大抵当てられたし、時には東京湾からの潮の香りを嗅ぐこともできた。(ちなみに我家は中野だ)
 においぶくろは私の宝箱の定番商品だった。誰がくれたものか記憶はないが、いつもひとつかふたつ、においぶくろが手元にあった。
 白檀や麝香(じゃこう)といったロマンティックな香りのもの、丁字や松などのスパイシーな香りのもの……。鼻を近づけた瞬間に、気分も雰囲気もすっかり変わってしまうから、芳香というのは本当に不思議。一秒でリラックスできてしまう。
 においぶくろは、まさに「携帯できる楽園」だと思う。

(2000年10月の個展『心の図鑑』より)



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